カンタータ《Nun komm, der Heiden Heiland(さあ来てください、異邦人の救い主よ)》BWV 61 は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが 1714 年の待降節第1主日のためにヴァイマルで作曲し、同年 12 月 2 日にそこで初演されました。ヴァイマルの楽師長に昇進した彼が、カンタータ創作の任により披露した作品でもあり、初期の代表作の一つとして知られています。
作品はエルドマン・ノイマイスターのテキストに基づいており、これは彼のカンタータ詩篇(=年次サイクル)第4年巻の冒頭をなすもので、ゲオルク・フィリップ・テレマンも同テキストに作曲しました。冒頭合唱にはグレゴリオ聖歌 Veni redemptor gentium の第1節が用いられており、マルティン・ルター(1524)による独語詩への翻案によって、これはプロテスタント教会における待降節の最重要コラールとなりました。

バッハはこの伝統的コラール旋律をフランス序曲(Ouverture)の形式に組み込み、ここではそれを天の王の入城の象徴として扱い、教会暦の開幕にふさわしい、同時に異例で壮麗な序曲的楽章を生み出しています。フランス風スタイルは、ヴィオラ2本を含む五部の弦楽編成の採用からもうかがうことができます。

第4曲のバス・レチタティーヴォ(テキストは聖書、黙示録3章20節からの直引用)を除けば、以降の全曲が「救い主の来臨」をめぐる言葉を扱っています。第2曲と第3曲は内容上も結び付いており、バッハは両曲をテノール独唱に割り当て、自筆譜の記譜が示すとおり無休止で連続させています。レチタティーヴォは救い主の誕生と、その来臨が信徒にもたらす喜びを述べ、続くアリアはイエスへの直接の呼びかけとして「新しい年への祝福」を願い求めます。第4曲では、特異なピツィカートの弦楽器の響きと、キリストの声(vox Christi)の担い手としてのバスという選択によって、聖句の重みがいっそう際立ちます——「イエスは来て戸を叩く」。今度は信徒が戸を開き、自らを救い主に委ねる番となります。続くソプラノ・アリアは、この聖句に対する応答として理解することができます。ノイマイスターはカンタータの結びに、フィリップ・ニコライ作のコラール〈Wie schön leuchtet der Morgenstern(輝く曙の明星のいと美わしきかな)〉から半詩節を据えました。選択は巧みで、そこには一方で確言の「アーメン」が、他方で嘆願の「来てください(komm)」が含まれています。バッハは原旋律を用いてこれをコラールとして作曲しましたが、ヴァイオリンのオブリガートは予想されるソプラノの補強ではなく独立した旋律が与えられ、結果としてこの終曲も冒頭合唱と同様に五声的な書法となっています。
歌詞について
自由詩(ノイマイスター)+既存コラール+聖書直引用の“ハイブリッド構成”です。
第1曲(合唱):M. ルターのコラール 「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」(1524)第1節第2曲(Recit. T):ノイマイスターの自由詩(1714)第3曲(Aria T):ノイマイスターの自由詩第4曲(Recit. B):聖書 黙示録3:20 の直引用(vox Christi)第5曲(Aria S):ノイマイスターの自由詩第6曲(Choral):Ph. ニコライのコラール「輝く曙の明星のいと美わしきかな」(1599)最終節後半(定旋律 = BWV 436)。
ピッチについて
オルガン関係の史料から、ヴァイマル期のカンタータは原則として コーアトーン(Chorton) で運用されていたことが確認できます。BWV 61 もこの慣行に則したピッチで演奏します。




【出典】Christoph Wolff and Markus Zepf, “The Organs of J. S. Bach, A Handbook” Published in cooperation with the American Bach Society, 2012
資料および校訂について
本作の唯一の資料は、J.S.バッハの所持にかかる清書譜です。バッハの没後、この譜面はカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの所有となり、のちにゲオルク・ポールハウの収集物に入り、1841 年に相続人が当時のベルリン王立図書館へ売却しました。第1曲は、その大部分が Anon. Weimar 2 による写譜とされていましたが、近年の研究で、それがヨハン・ローレンツ・バッハ(1695–1773、作曲者の従兄・弟子)を指している可能性が高いとされています。バッハ自身の手によって書かれた部分は、表紙のいくつかの記入、テキストの一部割り付け(歌詞の下書き)のみとなっています。残りの楽章(2〜6曲)はすべてバッハ自筆であることがはっきりしています。写譜者が存在すること、清書譜であること、そして間違いがほとんどないことから、この資料がバッハの草稿ではないことは明らかだと思います。表紙にはバッハ自身の筆で、次のように記されています。
Dominica. 1. Adventus Xsti. / Nun komm’ der Heyden Heyland. / à 1 / due Violini / due Viole / Violoncello e / Fagotto. / Sopr: Alto, Tenore e Baßo / col’ Organo. / da / Joh: Sebast: Bach / a[n]no. 1714.

第1ページ冒頭にも、やはりバッハの手で次の表題があります。
Concerto. à 5 Strom. 4 Voci. Domin: 1 Adventus Xsti. JSBach.

さらに表紙裏には、1723 年 11 月 28 日の再演に関連して、ライプツィヒの礼拝順序がメモされています。

残念ながら、当時の原パート譜は現存しません。もし残っていれば、数字付低音(とりわけ《Öffne dich, mein ganzes Herze》の和声について)を含んでいたと考えられ、また再演時に管楽器(とくにオーボエ)による音量補強を行ったかどうかについても、手がかりがあったように思われます。

































