“O Ewigkeit, du Donnerwort” BWV 20

《おお、永遠、そは雷のことば》

用途:三位一体節後第1主日
初演:1724年6月11日、ライプツィヒ
福音書:ルカ16, 19-31(富める者とラザロの譬え)
歌詞:ヨハン・リストのコラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」(1642)に基づく。第1・7・11曲は原詩句、第2-6曲・8-10曲は作者不詳による言い換え。
編成:合唱; A, T, B 独唱; Tromba da tirarsi, Ob3, Vn1, Vn2, Va, BC.
基本資料:自筆草稿・パート譜(現存)
演奏時間:約31分

【出典】
Bach Digital を参照して作成。

🎼 楽譜のリンク

IMSLP: BWV 20

全体の解説

カンタータ《おお永遠よ、雷の言葉》BWV 20 は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが取り組んだ、おそらく最も野心的な作曲プロジェクトの幕開けを飾る作品と言えるかもしれません。

すなわち、トーマス教会のカントルである彼が1724年の三位一体節後第1日曜日から二年目の教会カンタータのサイクルとして着手した、いわゆるコラール・カンタータの企画です。

このプロジェクトは1725年の復活祭をもって中断されます。

その理由はおそらくテキスト作者の死によるものと思われています。

バッハとこの作者は親しい関係にあり、作者は6〜8曲分の歌詞をひとまとめにして定期的に印刷・配布しながら、常に数週間先の礼拝のためのテキストを書き続けていました。

バッハはその歌詞を受け取りながら次々と作曲を進めていましたが、作者の急逝によってプロジェクトは突然幕を閉じることになったのです。


このカンタータの歌詞の土台となっているのは、1642年にヨハン・リストが作詞した同名の讃美歌です。

ゴットフリート・フォペリウスの讃美歌集(1682年以降)に収録されてライプツィヒで広く親しまれていましたが、もとの16節から12節に短縮された形で掲載されていました。

バッハはこの讃美歌の各節を一曲ずつに当てはめるかたちで全体を構成しています。

ただし第4曲だけは例外で、二つの節をひとつのレチタティーヴォにまとめ、さらに第9節の一部を第9曲に移しています。

第1節・第8節・最終節はそのまま使われ、アリアやレチタティーヴォとして付曲された他の節も讃美歌の原文に忠実です。

唯一第10曲だけは、テキスト作者が三位一体節後第1日曜日の福音書 —— 富める者と貧しいラザロのたとえ話(ルカ 16:19–31)—— への言及を書き添えています。


バッハの意欲は、まず冒頭の壮麗な合唱曲に現れています。

フランス風序曲の形式をとり、三つの各部分に讃美歌の2行ずつが収められています。

速い中間部は前後の遅い部分と比べると少し短めになっていますが、これはバッハ自身も悩んだ箇所だったようで、原典の楽譜(資料)にはいくつかの小節を消した跡が残っています。

複数回(二度目?)の試みでようやく満足のいく形に仕上げたようです。


冒頭楽章に続いて、レチタティーヴォとアリアのペアが2組 置かれています。

一方はテノール、もう一方はバスが担います。

最初のペア(テノール)では、罪人が自ら招く永遠の断罪が劇的に描かれ、二つ目のペア(バス)ではそれを神の計り知れない正義として受け止めます。

第6曲のアルト・アリアでは、罪と地獄からの解放へと向かう言葉が歌われます。

そして、讃美歌の第8節による四声部コラールがカンタータ第一部を締めくくります。


説教の後、おそらく聖餐式の際に第二部が演奏されました。

バス・アリアで幕を開けるこの第二部では、バス独唱が罪の眠りから目覚めるよう呼びかけます。

ファンファーレを思わせるトランペットがオーケストラを彩り、楽章全体に力強い性格を与えています。

続くアルト・レチタティーヴォとアルト・テノールの二重唱は第6曲と内容的に呼応しており、福音書への言及によってその意味をさらに深めます。

そして第一部の終わりに歌われたコラール楽章が再び現れ(第7曲)、今度は讃美歌の最終節のテキストをまとって、この野心的な大作を締めくくります。


テキストの規模が大きかったため、バッハは冒頭合唱以降の楽曲をコンパクトにまとめる方針をとったようです。

伴奏付きレチタティーヴォや長大なダ・カーポ・アリアは避けられていますが、その分アリアはそれぞれ個性的な器楽編成によって際立っています。

テノール・アリア(第3曲)とアルト・アリア(第6曲)には弦楽伴奏が用いられ、第1バス・アリア(第5曲)では通奏低音とオーボエ3本という珍しい編成となっています。

一方、第二部を開く第2バス・アリアには全管弦楽が動員されますが、続く二重唱では弦楽高音部と管楽器が省かれており、編成のバランスが綿密に計算されていることがわかります。

そのように考えると、この作品にソプラノ独唱が登場しないことはむしろ意外です。

その理由として、1724年の復活祭以降、適切な少年ソプラノが確保できなかった可能性が挙げられます。

同時期の他のカンタータでも —— 臨時に作曲されたものを除いて —— ソプラノは技術的な負担の少ない合唱楽章やコラールにしか使われておらず、それがひとつの傍証となっています。


このカンタータの原典資料はほぼ完全に現存しており、自筆譜に残された書き込みから、バッハの存命中にライプツィヒで繰り返し演奏されていたことがわかります。

自筆総譜はバッハの死後、息子ヴィルヘルム・フリーデマンに渡り、その後いくつかの家を経て現在の所蔵者のもとに落ち着きました。

パート譜はアンナ・マグダレーナ・バッハが保管していましたが、1750年にトーマス学校に売却されています。

このパート譜(現在ベルリン国立図書館所蔵²)は後に新しいパート譜を作る際の手本として使われましたが、作品の前半部分のみに限られていました。

その後の詳しい経緯はわかっていませんが、1800年頃にはトーマス教会楽長補佐のヒラーやミュラーによって公開演奏されたことが Allgemeine Musikalische Zeitung に記されています¹。

また1806年にはライヒャルトが「最も親しまれ、最も名高い教会カンタータのひとつ」と評しています³。

広く知られるようになったのは1851年のバッハ協会全集への掲載以降のことで、新バッハ全集にはジェームズ・ウェブスターの編集により1967年から収録されています⁴。


原注

¹ Allgemeine musikalische Zeitung, 5. Jg. 1802/03, Sp. 246f.

² 現在ベルリン国立図書館、プロイセン文化財、音楽部門所蔵、メンデルスゾーン・アルヒーフ、請求番号 Mus. ms. Bach St 75。

³ Berlinische musikalische Zeitung, 2. Jg. Nr. 51, S. 201f.(フォルケルの著書『ヨハン・ゼバスティアン・バッハの生涯、芸術と作品』への批判の証左として第9曲の短い抜粋を掲載、ライプツィヒ、1802年)。

⁴ BG 2, S. 291–327, Kritischer Bericht auf S. XVI; NBA I/15, S. 133–178(批判的報告は1968年刊行)。


制作ノート

フランス風序曲の演奏慣習に習い、冒頭楽章の付点音符を含むリズム型は詰めて鋭く演奏されるべきであると考えています。

その度合いについては各箇所ごとに異なります。

演奏者の意見も交えてのディスカッションを経て、それぞれに適切な音の長さと表現を決めて演奏したいと思います。


第2、4曲のレチタティーヴォ・セッコについては、通奏低音に16フィートを加えます。このカンタータの規模が大きいこと、男性歌手が厳しい内容を歌うためです。

第5曲のバスアリアは、オーボエ3本と通奏低音の編成です。木管楽器(ダブルリード)の世界に統一したいと思い、通奏低音をファゴット・16フィート(コントラバス)・オルガン を採用します。

第6曲のアルト・アリアは、前曲と対照的に弦楽器のみの編成で演奏します。


第8曲の1小節目第4拍の最初の音については、書かれていませんが付点音符で鋭く演奏します。付点休符があまり使われなかったという記譜上の慣行、曲の持つリズム感を統一することが理由です。

第9曲のレチタティーヴォも通奏低音に16フィートを加えます。地獄の轟々と燃える炎を表現するために付加します。

第10曲の通奏低音は、チェロ・16フィート(コントラバス)・オルガン を採用します。

2026年5月26日
圓谷 俊貴


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1. 合唱
“O Ewigkeit, du Donnerwort”

歌詞

O Ewigkeit, du Donnerwort,
O Schwert, das durch die Seele bohrt,
O Anfang sonder Ende!
O Ewigkeit, Zeit ohne Zeit,
Ich weiß vor großer Traurigkeit
Nicht, wo ich mich hinwende.
Mein ganz erschrocken Herz erbebt,
Daß mir die Zung am Gaumen klebt.
(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verse 1)

おお永遠よ、雷の言葉よ。
おお魂を刺し貫く剣よ。
おお始まりにして終わりなきものよ。
おお永遠よ、時なき時よ。
あまりの悲しみのゆえに、
わたしはどこへ向かえばよいのか分からない。
すっかり怯えきったわたしの心は震え、
舌は上あごに張り付く。
(コラール「おお永遠よ、雷の言葉よ。」第1節)


楽曲の分析

トランペット、オーボエ3本、弦楽、通奏低音を擁するヘ長調の壮大な合唱曲です。
拍子は 4/4 — 3/4 — 4/4 と変化し、フランス風序曲の形式をとっています。


ソプラノに定旋律(カントゥス・フィルムス)が置かれ、他の声部がそれを対位法的に取り囲みます。


「永遠」という畏敬すべき言葉を、歌詞作者は恐怖の対象として捉えました。

罪に悩むこの世の人間にとって、永遠とはおそるべき言葉であり、最後の審判のあとに待つのは罪の報いたる責苦にほかなりません。

「おお魂を刺し貫く剣よ」「舌は上あごに張り付く」というテキストが、聴く者の心に「永遠」の恐ろしさを刻み込みます。

コラール・カンタータ年度の幕開けを飾るにふさわしい、圧倒的な規模の楽章です。


“Traurigkeit”(悲しみ)と “erschrocken”(怯えきった)の両語に施されたメリスマは、非常に修辞的な書法です。

「悲しみ」の言葉が長く引き伸ばされることで、出口を見つけられずに彷徨う魂がヒュポティポーシスとして描かれます。


90小節のフェルマータはアブルプツィオ(突然の停止、旋律の分断)の修辞的表現です。とてもアフェクトが強い箇所です。


「怯えきった」の鋭い付点音符もまた、全身を走る震えを体現しています。「舌は上あごに張り付く」というテキストはインパクトがあり、「永遠」という恐怖に足がすくむ様子が鮮やかに描かれます。


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2. レチタティーヴォ(テノール)
“Kein Unglück ist in aller Welt zu finden”

歌詞

Kein Unglück ist in aller Welt zu finden,
Das ewig dauernd sei:
Es muß doch endlich mit der Zeit einmal verschwinden.
Ach! aber ach! Die Pein der Ewigkeit hat nur kein Ziel;
Sie treibet fort und fort ihr Marterspiel,
Ja, wie selbst Jesus spricht,
Aus ihr ist kein Erlösung nicht.
(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verse 2)

この世のあらゆる不幸のうちにも、
永遠に続くものは見いだせない。
いつかは時とともに消えていくものだ。
ああ、しかし、ああ。永遠の苦しみにだけは終わりがない。
それは絶え間なく責め苦の戯れを続け、
そう、イエスご自身が語られるように、
そこからは決して救いはない。
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第2節)


楽曲の分析

この世の不幸はいつかは消えていくが、永遠の責め苦だけには終わりがない
—— その対比を、テノールが語ります。

音楽と言葉が緊密に結びついた表情豊かなレチタティーヴォで、”ewig”(永遠)の語が長く引き伸ばされる箇所はヒュポティポーシス となっています。


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3. アリア(テノール)
“Ewigkeit, du machst mir bange”

歌詞

Ewigkeit, du machst mir bange,
Ewig, ewig ist zu lange!
Ach, hier gilt fürwahr kein Scherz.
Flammen, die auf ewig brennen,
Ist kein Feuer gleich zu nennen;
Es erschrickt und bebt mein Herz,
Wenn ich diese Pein bedenke
Und den Sinn zur Höllen lenke.
(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verse 3)

永遠よ、おまえはわたしをおびえさせる。
永遠、それはあまりにも長すぎる。
ああ、ここでは戯れは一切通じない。
永遠に燃え続ける炎には、
どんな火も比にならない。
この責め苦を思い、
心を地獄へと向けるとき、
わたしの心はおののき、震える。
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第3節)


楽曲の分析

死後の永遠なる責め苦を嘆くアリアです。弦楽を伴うハ短調、3/4拍子。

「ため息のモティーフ」が器楽により繰り返し奏されます。

修辞的な表現が随所に散りばめられたアリアでもあります。

“ewig”(永遠)のロングトーン、”bange”(おびえ)のうねる様な嘆きの音形、”Flammen”(炎)の強烈で激しいメリスマ、唐突に現れる”Ach!”(ああ)の増音程などテキスト一語一語が雄弁に語りかけます(ヒュポティポーシス)。


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4. レチタティーヴォ(バス)
“Gesetzt, es dau’rte der Verdammten Qual”

歌詞

Gesetzt, es dau’rte der Verdammten Qual
So viele Jahr, als an der Zahl
Auf Erden Gras, am Himmel Sterne wären;
Gesetzt, es sei der Pein so weit hinausgestellt,
Als Menschen in der Welt
Von Anbeginn gewesen,
So wäre doch zuletzt
Derselben Ziel und Maß gesetzt;
Sie müßte doch einmal aufhören.
Nun aber, wenn du die Gefahr,
Verdammter! tausend Millionen Jahr
Mit allen Teufeln ausgestanden,
So ist doch nie der Schluß vorhanden;
Die Zeit, so niemand zählen kann,
Fängt jeden Augenblick
Zu deiner Seelen ew’gem Ungelück
Sich stets von neuem an.
(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verses 4 and 5)

たとえ地獄に落ちた者たちの苦しみが、
地上の草の数、空の星の数ほどの
歳月だけ続くのだとしても、
たとえその責め苦が、この世の初めから
存在した人間の数に等しいほど
長く引き延ばされているのだとしても、
それでも最後には、
その終わりと限りが定められているだろう。
いつかは終わらねばならないのだ。
だが今や、もしおまえがこの危難を、
おお、呪われた者よ、何十億年にもわたって
あらゆる悪魔とともに耐え抜いたとしても、
それでもなお終わりは決して来ない。
誰にも数えることのできないその時は、
一瞬ごとに、おまえの魂の永遠の不幸のために、
つねに新たに始まるのだ。
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第4・5節)


楽曲の分析

バスが預言者的な威厳をもって語ります。

地上の草の数、空の星の数ほどの歳月が続く苦しみでさえいつかは終わりが来る。
しかし永遠の苦しみだけは違う。

永遠が、呪いのように終わりなく降りかかります。


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5. アリア(バス)
“Gott ist gerecht in seinen Werken”

歌詞

Gott ist gerecht in seinen Werken:
Auf kurze Sünden dieser Welt
Hat er so lange Pein bestellt;
Ach wollte doch die Welt dies merken!
Kurz ist die Zeit, der Tod geschwind,
Bedenke dies, o Menschenkind!
(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verses 6 and 7)

神はその御業において正しい。
この世の短い罪に対して、
神はこれほど長い苦しみを定められた。
ああ、世がこれを悟ってくれるなら!
時は短く、死はすばやい。
これを心に留めよ、おお人の子よ!
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第6・7節)


楽曲の分析

永遠の責め苦はわれらの罪の報いであり、神の裁きは正しい
—— 第4曲で語られた永遠の恐怖を、このアリアは神の計り知れない正義として受け止めます。

変ロ長調、4/4拍子のダ・カーポ・アリアで、弦楽を用いず3本のオーボエと通奏低音のみという珍しい編成が、他のアリアとは異なる独特の音色をもたらしています。

アルペッジョによる主題は神の正しさを毅然と伝え、「時は短く、死はすばやい。これを心に留めよ、おお人の子よ」という警告の言葉がバスによって語られます。


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6. アリア(アルト)
“O Mensch, errette deine Seele”

歌詞

O Mensch, errette deine Seele,
Entfliehe Satans Sklaverei
Und mache dich von Sünden frei,
Damit in jener Schwefelhöhle
Der Tod, so die Verdammten plagt,
Nicht deine Seele ewig nagt.
O Mensch, errette deine Seele!

人よ、おまえの魂を救え。
サタンの奴隷から逃れ、
罪から自由になれ。
そうすれば、あの硫黄の洞穴で、
滅びた者たちを責める死が、
おまえの魂を永遠に食い尽くすことはない。
人よ、おまえの魂を救え。


楽曲の分析

弦楽と通奏低音を伴うニ短調、3/4拍子。

永遠の恐怖を描いてきた第一部の中で、初めて罪と地獄からの解放へと向かう言葉が歌われます。

3拍子とヘミオラ(3/2)が交互に現れる Corrente 書法で書かれています。

本来、この舞曲は快速ですが、このアリアは装飾音も豊富でメヌエットのような優雅さが見え隠れします。

流麗な音楽の中、拍子感が頻繁に変わりながらアルトが「魂の救い」を語りかける、ウィットに富んだアリアと言えるでしょう。


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7. コラール
“Solang ein Gott im Himmel lebt”

歌詞

Solang ein Gott im Himmel lebt
Und über alle Wolken schwebt,
Wird solche Marter währen:
Es wird sie plagen Kält und Hitz,
Angst, Hunger, Schrecken, Feu’r und Blitz
Und sie doch nicht verzehren.
Denn wird sich enden diese Pein,
Wenn Gott nicht mehr wird ewig sein.
(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verse 8)

神が天に生き、
すべての雲の上にいますかぎり、
このような責め苦は続くだろう。
寒さと熱、
不安、飢え、恐怖、火と稲妻が
彼らを苦しめ、それでも滅ぼし尽くしはしない。
というのも、この苦しみが終わるのは、
神がもはや永遠でなくなる時だけだから。
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第8節)


楽曲の分析

責め苦はやまず」という第一部の基本命題を、合唱(共同体の声)で確認するコラールです。


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8. アリア(バス)
“Wacht auf, wacht auf, verlornen Schafe”

歌詞

Wacht auf, wacht auf, verlornen Schafe,
Ermuntert euch vom Sündenschlafe
Und bessert euer Leben bald!
Wacht auf, eh die Posaune schallt,
Die euch mit Schrecken aus der Gruft
Zum Richter aller Welt vor das Gerichte ruft!

目を覚ませ、目を覚ませ、失われた羊たちよ。
罪の眠りから奮い立ち、
すぐにその生き方を改めよ。
ラッパが鳴り響く前に目を覚ませ。
それはおまえたちを恐れとともに墓から呼び出し、
全世界の審判者の裁きの前へと呼び立てるのだ。


楽曲の分析

技巧的で勇ましい器楽とトランペットのファンファーレが最後の審判の訪れを告げ、第二部の幕を開けます。

「目を覚ませ、目を覚ませ」—— バスが罪の眠りからの目覚めを強く促し、悔い改めへと呼びかけます。


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9. レチタティーヴォ(アルト)
“Verlaß, o Mensch, die Wollust dieser Welt”

歌詞

Verlaß o Mensch, die Wollust dieser Welt,
Pracht, Hoffahrt, Reichtum, Ehr, und Geld;
Bedenke doch
In dieser Zeit annoch,
Da dir der Baum des Lebens grünet,
Was dir zu deinem Friede dienet!
Vielleicht ist dies der letzte Tag,
Kein Mensch weiß, wenn er sterben mag.
Wie leicht, wie bald
Ist mancher tot und kalt!
Man kann noch dies Nacht
Der Sarg vor deine Türe bringen.
Drum sei vor allen Dingen
Auf deiner Seelen Heil bedacht!

(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verses 9-11)

人よ、この世の快楽、
華美、高慢、富、名誉、そして金を捨てよ。
なおこの時にこそ、
よく考えるのだ。
命の木がまだ青々としているうちに、
何があなたの平安に役立つのかを。
おそらく今日は最後の日である。
人はいつ死ぬか、誰も知らない。
なんとたやすく、なんと早く、
多くの者は死んで冷たくなることか。
今夜にもなお、
棺があなたの戸口へ運ばれて来るかもしれない。
だから何よりもまず、
あなたの魂の救いを心にかけよ。
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第9-11節)


ルカ 16:19–31

富める者と貧しいラザロ

金持ちとラザロのたとえ話は、ルカ福音書の中でも特に鮮明な対比をもって語られる物語です。

ある金持ちの男は紫の衣をまとい、毎日ぜいたくに楽しんで暮らしていました。

一方、ラザロという名の貧しい男は、でき物だらけの身体で金持ちの門前に横たわり、食卓から落ちるパン屑で腹を満たすことさえできず、犬がやってきて彼の傷をなめていました。

やがて二人は死を迎えます。

ラザロは天使たちに運ばれてアブラハムのふところへ、金持ちは冥界で苦しみの中に置かれました。

炎の中で金持ちはアブラハムを見上げ、ラザロに水を運ばせてほしいと懇願しますが、アブラハムはこう答えます。

「おまえは生きている間に良いものを受け、ラザロは苦しみを受けていた。今は逆転している。」


この物語が突きつけるのは、富と快楽に満ちた地上の生は束の間にすぎず、死の後には逆転が待っているという厳然たる事実です。

「華美、高慢、富、名誉、金を捨てよ」というBWV 20 のテキストは、まさにこのたとえ話の教訓を直接受けています。

時は短く、死はすばやい —— 今この時に魂の救いを心にかけなければ、富める者と同じ道をたどることになると警告します。


楽曲の分析

この世の快楽・富・名誉を捨て、魂の救いを心にかけよと語ります。

テキストは三位一体節後第1日曜日の福音書 —— 富める者と貧しいラザロのたとえ話(ルカ 16:19–31)—— を背景に持ち、富と快楽に満ちた地上の生は束の間にすぎず、死の後には逆転が待つという警告が込められています。

2〜4小節の分散和音による広い跳躍音型は、P・ミースが「口を開いた地獄の復讐」と形容したもので、地獄への口が開き轟々と燃える炎を想起させます。


「今夜にもなお、棺があなたの戸口へ運ばれて来るかもしれない」—— 死の突然の訪れに警鐘を鳴らし、今この時に魂の救いを心にかけよと促します。


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10. 二重唱(アルト・テノール)
“O Menschenkind, hör auf geschwind”

歌詞

O Menschenkind,
Hör auf geschwind,
Die Sünd und Welt zu lieben,
Daß nicht die Pein,
Wo Heulen und Zähnklappen sein,
Dich ewig mag betrüben!
Ach spiegle dich am reichen Mann,
Der in der Qual
Auch nicht einmal
Ein Tröpflein Wasser haben kann!

おお人の子よ、
今すぐやめよ、
罪とこの世を愛することを。
泣き叫びと歯ぎしりのあるその責め苦が、
おまえを永遠に悲しませることのないように。
ああ、あの富める人に自分を映してみよ。
彼は苦しみの中で、
たった一滴の水さえ
得ることができないのだ。


楽曲の分析

通奏低音のみを伴奏に、アルトとテノールがイ短調、3/4拍子で歌い交わします(二重唱)。

冒頭の4音による短い前奏は「おお人の子よ、急いでやめよ」の音型を先取りしており、この言葉はカンタータ全体を貫く戒めの言葉となっています。


二つの声部はラザロと富める者を象徴しますが、ここでは対立ではなく、むしろ二声が並走しながら同じ内容(魂の救いを心にかけよ)を語ります。


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11. コラール
“O Ewigkeit, du Donnerwort”

歌詞

O Ewigkeit, du Donnerwort,
O Schwert, das durch die Seele bohrt,
O Anfang sonder Ende!
O Ewigkeit, Zeit ohne Zeit,
Ich weiß vor großer Traurigkeit
Nicht, wo ich mich hinwende.
Nimm du mich, wenn es dir gefällt,
Herr Jesu, in dein Freudenzelt!

(“O Ewigkeit, du Donnerwort,” verse 12)

おお永遠よ、雷の言葉よ。
おお魂を刺し貫く剣よ。
おお始まりにして終わりなきものよ。
おお永遠よ、時なき時よ。
あまりの悲しみのゆえに、
わたしはどこへ向かえばよいのか分からない。
どうか御心にかなうなら、
主イエスよ、わたしをあなたの
喜びの幕屋へ受け入れてください。
(コラール「O Ewigkeit, du Donnerwort」第12節)


楽曲の分析

第1曲と同じ讃美歌の旋律が、第7曲と同じ和声づけで再び現れます。

冒頭と同じ「おお永遠よ、雷の言葉よ」で始まりながら、最終節では「主イエスよ、わたしをあなたの喜びの幕屋へ受け入れてください」という祈りへと結ばれます。

永遠の恐怖に思いを致しながらも、その恐怖の中から救いへの願いへと向かいます。


2026年5月26日 圓谷 俊貴

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